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【高山農園/新十津川町】

自然栽培への挑戦と可能性。見えない生物の力を伸ばす農業
【高山農園/新十津川町】

掲載年月:2018年2月

高山農園

企業・団体のビジョンやミッション

慣行農法への疑問

新十津川町の山間部から不動坂と呼ばれる坂を下り、弥生地区という田園風景広がる場所にある、自然との共存を目指す米農家、高山農園。事業経営者は高山雄二さんですが、自然栽培の可能性に挑戦する息子の裕將さんと、裕將さんの奥さん、佳那恵さんにお話を伺いました。
裕將さんは、幼いころ見ていた慣行農法の光景に疑問を抱いていました。効率よく作物を育てるために大量の農薬が撒かれたあと、そこには無数の虫の死骸があり、自然の力を借りているはずの農業が、まるで自然を敵視しているかのように見えたと言います。「通学時に散布されている農薬の中を進むのが本当に嫌でした。」と裕將さんは話します。
裕將さんは札幌の大学で環境問題について学び、卒業後は建設コンサルタント会社にて、工事が自然環境に与える影響を調べる環境調査の仕事をしていました。農業には携わろうと考えていたので、雄二さんの病気を機に新十津川に戻り、故郷での農業をスタートさせました。佳那恵さんとは同じ大学で出会います。佳那恵さんは函館の出身で、2級建築士の資格を持ち、札幌のハウスメーカーで勤務していました。「農業には元々興味はなかったけど、キャンプ、川遊び、山登り等のアウトドアでの活動は好きでした」と話します。

新十津川での挑戦

新十津川に戻って実際に米農家になってみると、無農薬への転換は容易でない事がわかりました。高齢化によって離農する人も増え、年々耕地面積も増大している中で、手間のかかる無農薬栽培の稲作に取り組むことは大変なことです。周囲に無農薬でお米を作る農家もおらず、技術も知識も無かったので、無農薬での稲作を独自に勉強しました。その中で、無肥料・無農薬で育てる自然栽培という農法を知り、就農2年目より挑戦を始めました。
時間はかかりましたが農作業にも慣れてきて、土や水、植物や動物の知識も増え少しずつ成果を出せるようになってきます。「大変でしたけど、思い通りにいかないことに対処するのが技術だとも思いますし、自然相手に試行錯誤するのも楽しいですよ。」と裕將さんは語ります。
以前勤めていた会社の方が買ってくれたり、札幌のAGT(アジト)というお店で「高山農園の自然栽培米」として扱ってくれたりするようにもなりました。「都市部での反応はイメージしていたのですが、今まで買える場所がなかっただけで、意外に地元にもニーズがありました。」と裕將さん。最近、自分の子供に食べさせるためのおやつを作ってみたところ、予想以上の反響があったと言います。「子供に安全な良いものを食べさせたいお母さんが増えたのではないでしょうか。」と佳那恵さんは話します。

農業は一年を通しての作業でもあり、一年に一度の収入も一歩間違えれば大幅に減ってしまう可能性もあります。自然栽培米は農協で評価してもらえないため、技術や販売ルートを自分で開拓していく作業も避けては通れません。「これから農家として生き残っていくには、色々な取り組みをやっていかなければならないと皆考えていると思います。なので、自分たちの挑戦を陰ながら見守ってくれる人も多いですよ。」と裕將さんは話します。

自然栽培の可能性

自然栽培に取り組むようになってから、できることも増えてきたと言います。例えば稲わらを使った納豆づくり。自然栽培の稲わらには納豆菌が多く生息しているらしいです。他には自然栽培米の田んぼでの除草体験。都市部の自然に触れ合う機会の少ない人たちには大好評だったようです。
「人体や自然にも害のある薬が撒かれた田んぼで、子供を遊ばせるのは抵抗があります。」と話す佳那恵さん。自らも子供を持つようになって安全な食品に対する意識も大きくなったと言います。食の安全に対する意識が高まる一方で、その窓口となる生産者の少なさも指摘します。「育児がひと段落したら、親子で参加できるイベントも行ってみたいですね。農家に触れ合う機会が増えれば農業に対する理解や支援も増えると思いますし、小さい時から農業に興味の湧く環境を作っていくのも大事だと思います。」と多くの人の日常から農業が遠くなってしまっている現状と自然栽培農業の可能性を教えてくれました。

自然栽培と微生物

自然栽培での農業に挑戦する一方で、裕將さんは発酵食品についても勉強をしていました。酒蔵での勤務経験を通じ、米麹を作る技術を手に入れます。自宅で味噌や醤油づくりに挑戦してみて、微生物の持つ力に驚いたと言います。
今でこそ様々な研究が進み、発酵食品には多くの効果があることが分かってきましたが、昔の人が日常的に行っていた作業が、体に良い食品づくりにとって現在でも理にかなっていることが多いようです。またその一方、自然栽培にとっても微生物が田んぼに与える影響も大きいのだとか。自然栽培の稲が強く育つために必要不可欠な働きをする菌の存在も教えてくれました。「農薬を使っていた田んぼでは見られない生物が増えてきました。」と、お互いに良い影響を与え合う生物や、その生物の力をどうやって伸ばしていくかのお話をいただきました。

代表者からのメッセージ

新十津川は自然豊かで、皆のんびりと暮らしている印象です。広くて自由な環境だし、周辺の都市部には行きやすい距離、公共施設の設備も近隣と比べれば調っているのではないでしょうか。農業関係の他にも、住宅や医療などの暮らしていく上での補助金、助成金も豊かな方だと思います。
冬の雪は大変ですが、農業は楽しいですし夏頑張って冬楽しむ、話題となっている半農半Xという生活スタイルも北海道ならやりやすいのではないでしょうか。(高山 裕將さん)
昔の農家のイメージは、田舎に入って作業にどっぷり浸かるというもので、友人や昔を知る人たちに心配されましたが、今は機械も充実していますし、自然栽培であれば自分たちで企画販売もできるし、外との繋がりもできやすく自由度は高いと思います。
(高山 佳那恵さん)

企業・団体の魅力

自然栽培を行うに当たって、周囲の信用を得ることも重要です。有機JASの取得はその一環。新十津川では難しいと言われていた稲作での有機栽培認証を得た先駆の農家となりました。
また、呼ばれれば積極的に町外に赴き、簡単にできる納豆や味噌づくりのワークショップ、微生物と農業の関係を説明する講習なども行い、自然栽培の必要性と普及に努めています。
町全体で「安全な食品づくり」の意識が高まれば良いと話す裕將さんは、手間がかかる反面、収益の出やすい自然栽培の可能性を模索しています。

コーディネーターからもひと言

都市部では、自然栽培の農作物はいまだ高級スーパーでしか扱われないイメージです。しかしながら少し値が張っても買いたい人がいるというのは、近隣のニーズの多さによって高山さんが実証しました。現代の消費者意識の変化により、普通のスーパーに並ぶ食品よりも、自分で選んだ生産者から直接買い付けたり、またその情報を得た消費者が新たな顧客となったり、農作物や加工品の購入のされ方にも変化が出始めています。それだけ食の安全に対する需要は増えているものの、その窓口の少なさから購入を諦める消費者も少なくありません。高山さん自身、少しずつ生産量を増やしているそうですが、まだまだ供給が追い付かないそうです。
日本の主たる食料供給地域である北海道、一昔前には普通であった大量生産、その効率化のために使われてきた農薬ですが、先進国ではもはや禁止されている薬品や、世界の食の安全基準に追い付いていない日本の現状も教えて頂きました。時代の波の中での農家の生き残りの難しさを知り、新時代の農業のあり方、その挑戦と可能性を教えていただきました。
(岩見沢・滝川エリア ローカルワークコーディネーター 髙野 智樹)

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